事業譲渡とは?業種・地域・金額別に譲渡先を探す方法を解説

- 事業譲渡とは、会社の事業の全部または一部を、選んで他者に譲渡する取引です。
- 事業譲渡には、原則として株主総会の特別決議が必要です(会社法第467条)。
- 従業員の雇用契約は自動では移らず、個別の同意や再契約が必要になります。
- 許認可も自動では引き継がれず、引継ぎ先で取り直しになる場合があります。
- 事業譲渡益は法人税の課税対象になり、資産の種類ごとに消費税の扱いが分かれます。
事業譲渡の結論

事業譲渡は「欲しいものだけを選んで引き継げる」一方で、契約も従業員も許認可も自動では移らない取引です。
私は事業承継の現場に12年いますが、経営者の方が一番つまずくのはここです。会社を売るイメージで話が始まるのに、事業譲渡は資産も契約も一つずつ移し替える作業になる。
会社法上、事業の全部または重要な一部を譲渡するときは、原則として株主総会の特別決議が必要です。これは制度の根っこなので最初に押さえてください。
業種で探す
事業譲渡の案件は、製造・小売・飲食・建設・IT・介護など、業種ごとに譲渡対象の中身がまるで違います。

たとえば飲食なら店舗の賃貸借契約と従業員、建設なら許認可と進行中の工事契約が論点になる。業種が変われば「何を引き継ぐか」が変わります。
特に許認可が事業の前提になる業種——建設業、運送業、介護、飲食——は要注意です。事業譲渡では許認可は原則として自動承継されず、引継ぎ先で新たに取得が必要になることがあります。
地域で探す
地域で探すなら、各都道府県に設置された事業承継・引継ぎ支援センターが最初の窓口になります。
私は商工会議所で事業承継の相談員もしていますが、地元の案件は地元の支援機関に集まりやすい。遠くのマッチングサイトを眺めるより、まず地域の公的窓口に足を運ぶほうが早いことが多いです。
中小企業庁が整備する支援体制では、後継者不在の中小企業と引継ぎ先をつなぐ取り組みが各地で進んでいます。
都道府県で探す

都道府県別に探すときは、事業承継・引継ぎ支援センターが47都道府県すべてに置かれていることを起点にしてください。
地域の金融機関や商工会議所も、地元案件の情報を持っています。私の実感では、地方ほど人のつながりで話が動く。窓口を一つに絞らず、複数の機関に声をかけておくのが現実的です。
譲渡希望金額で探す
譲渡希望金額は、事業の収益力と純資産をもとに評価され、案件ごとに大きく開きます。

正直に言うと、ここで断定的な相場を出すのは危険です。同じ業種でも、利益が出ているか、許認可が付くか、従業員が残るかで金額は何倍も変わる。
金額の根拠を理解するには、後述する「事業価値の評価方法」の章を読んでから希望額を眺めると、ぐっと納得感が出ます。
第三者承継の進め方
第三者承継は、相手探し→秘密保持契約→条件交渉→基本合意→デューデリジェンス→最終契約→実行、という順で進みます。
事業譲渡の場合、最終契約のあとに「中身を移す作業」が待っています。ここが株式譲渡と違ってひと手間多い。
| 段階 | 主な内容 |
|---|---|
| 相手探し・打診 | 支援機関やマッチングを通じて候補先を探す |
| 秘密保持契約 | 情報開示の前に締結する |
| 条件交渉・基本合意 | 譲渡対象・金額・スケジュールの大枠を決める |
| デューデリジェンス | 買い手が事業の実態を調査する |
| 取締役会・株主総会 | 原則として株主総会の特別決議を行う |
| 最終契約 | 事業譲渡契約を締結する |
| 実行・承継手続き | 契約・従業員・許認可を個別に移す |
事業の譲渡・譲受の進め方ポイント解説

進め方で一番大事なのは「何を譲渡対象に含めるか」を契約で明確にすることです。
事業譲渡では、資産・契約・従業員を個別に選んで承継させます。だからこそ「これは含む」「これは含まない」を一つずつ詰めないと、後で揉めます。
私が現場で必ず確認するのは次の4点です。
- 契約は自動では移らない。取引先や賃貸人の同意を取り直す必要がある契約を洗い出す。
- 従業員の雇用契約は自動移転しないため、個別の同意や再契約を丁寧に進める。
- 許認可は原則として自動承継されないため、引継ぎ先での再取得を事前に確認する。
- 譲渡対象の資産・負債を一覧化し、契約書に明記する。
従業員対応はとくに慎重に。会社分割と違い、事業譲渡では雇用契約が自動で承継されないのが通常です。働く人にとっては一度退職して再入社する形になることもあり、説明を雑にやると一気に信頼を失います。
事業譲渡とは?
事業譲渡とは、会社の事業の全部または一部を、資産・契約・従業員などを個別に選んで他者に承継させる取引です。

会社法では「事業譲渡等」として規定され、事業の全部または重要な一部を譲渡するときは、原則として株主総会の特別決議が必要です。
ただし、譲渡する事業の規模が小さい「簡易事業譲渡」や、支配関係がある相手との「略式事業譲渡」では、株主総会の決議を省略できる場合があります。
ここで誤解しやすいのが「会社そのものは売っていない」という点。事業譲渡では、譲り渡す側の会社は法人として残ります。売るのはあくまで事業の中身です。
事業譲渡と株式譲渡・会社分割・合併の違い
4つの違いを一言でいうと、事業譲渡は「中身を個別に移す」、株式譲渡は「会社ごと移す」、会社分割は「事業を包括的に切り出す」、合併は「会社を一つにする」です。
承継の仕方が違うので、契約・従業員・税金の扱いが変わります。表で並べると差がはっきりします。
| 手法 | 承継の対象 | 契約・従業員の移転 | 会社法上の主な決議 |
|---|---|---|---|
| 事業譲渡 | 選んだ資産・契約・従業員 | 個別に同意・再契約が必要 | 原則として株主総会の特別決議 |
| 株式譲渡 | 会社の株式(会社ごと) | 会社が当事者のまま自動で継続 | 株主総会決議は原則不要 |
| 会社分割 | 事業に関する権利義務を包括的に | 原則として包括的に承継される | 原則として株主総会の特別決議 |
| 合併 | 会社の権利義務すべて | 包括的に承継される | 原則として株主総会の特別決議 |
事業譲渡が向いているのは、不採算事業だけを切り離したいとき、主力事業に集中したいとき、経営権は手元に残したいとき、買い手が必要な事業だけ取りたいとき、新規事業へ素早く参入したいときです。
逆に、会社全体をそっくり引き継ぎたい、契約の移し替えの手間を避けたい、という場合は株式譲渡のほうが向きます。事業譲渡は手続きが多いので、移すものが多いほど負担が重くなる。
株式譲渡との違い

最大の違いは、事業譲渡が「中身を個別に移す」のに対し、株式譲渡は「会社の持ち主が変わるだけ」で契約や従業員がそのまま継続する点です。
買い手の視点で言うと、株式譲渡は簿外債務や過去のトラブルもまとめて引き継ぐリスクがあります。事業譲渡なら、引き継ぐ対象を選べるぶん、こうしたリスクを限定しやすい。
税金の入口も違います。事業譲渡では譲渡益が原則として益金に算入され、法人税の課税所得に反映されます。さらに、譲渡する資産の種類ごとに消費税の課税・非課税が分かれます。
正直、どちらが得かは一概に言えません。私が相談を受けたときは、まず「会社を残したいか」「リスクをどこまで切りたいか」を聞きます。そこが決まると手法は自然に絞れます。
会社分割との違い
会社分割は事業に関する権利義務が包括的に承継されるのに対し、事業譲渡は一つずつ個別に移すのが大きな違いです。

従業員の扱いがわかりやすい分かれ目です。会社分割には労働契約承継法という専用のルールがあり、一定の従業員の雇用が原則として承継されます。事業譲渡にはこの仕組みがなく、個別の同意が前提です。
手間だけ見れば会社分割のほうが一括で移せて楽に見えます。ただし分割は組織再編として手続きが重く、設計も複雑。移すものが限定的なら、事業譲渡のほうがシンプルに済むこともあります。
よくある質問
事業譲渡について現場でよく聞かれる質問を、要点だけ短くまとめました。
よくある質問
最後にひとつだけ。事業譲渡は「契約も従業員も許認可も自動では移らない」という前提を、関係者全員で共有できているかが成否を分けます。次の一歩は、譲渡対象のリストを紙に書き出すこと。そこから話を始めてください。
