経営者保証を引き継ぐリスクとは?事業承継前に確認すべき3つの注意点

- 経営者保証とは、会社の借金を社長個人が連帯保証することで、返済不能時に個人財産まで追われる仕組みです。
- 保証を引き継ぐと、個人財産の喪失・事業拡大の萎縮・後継者の承継拒否という3つのリスクが生じます。
- 「経営者保証に関するガイドライン」の3要件を満たせば、保証を外せる可能性があります。
- 事業承継特別保証制度なら、経営者保証なしで最大2億8,000万円まで融資が受けられます(2020年開始)。
- まず取引金融機関に相談し、判断材料を整えるのが解除への最短ルートです。
経営者保証 引き継ぎ リスクの結論

経営者保証は「引き継いで当たり前」ではなく、制度を使えば外せる・引き継がずに済む可能性があります。これがこの記事の結論です。
そもそも経営者保証とは、中小企業が金融機関から融資を受ける際に、経営者個人が会社の連帯保証人になることです。会社が返せなければ、社長個人が代わりに返済を求められます。
中小企業庁は、経営者保証が円滑な資金調達に役立つ一方で、思い切った事業展開・早期の事業再生・円滑な事業承継を妨げる要因になり得ると説明しています。
私は事業承継の相談を12年受けてきましたが、「保証だけが怖くて承継が止まる」ケースを何度も見ました。逆に言えば、ここさえ解けば話が一気に進みます。
財務戦略 finance
保証の引き継ぎは「財務の問題」であり、決算書をどう整えるかで結論が変わります。

経営者保証を外す判断材料は、感情論ではなく財務の中身です。中小企業庁の案内でも、法人と経営者の間で資産・お金の流れを分けることが重要だと示されています。
具体的には、社長個人への貸付や、会社のお金で私的な支払いをしている状態は不利に働きます。逆に、法人だけで返済できる利益体質を作っておくと交渉が通りやすい。
正直に言うと、ここを後回しにして承継直前に慌てる経営者がいちばん多いです。財務戦略は3年単位で前から仕込むものだと考えてください。
知らないでは済まされない「個人保証」の3大リスク
経営者保証を引き継ぐ主なリスクは、個人財産の喪失・事業拡大の萎縮・後継者の承継拒否の3つです。
これは私が現場で実際に直面してきた順番でもあります。次の3つの見出しで、ひとつずつ中身を見ていきます。
①所有財産を手放さなければならない可能性がある

最大のリスクは、会社が返済できなくなったとき、経営者個人が自宅などの財産で返済を求められることです。
連帯保証人は、会社と並んで返済義務を負います。会社の資産だけで足りなければ、保証人個人の預金・自宅・その他の財産が対象になります。
ただし救いもあります。東京商工会議所の案内では、ガイドラインを利用して廃業に至った場合でも、個人破産をせずに保証債務を整理できる可能性があるとされています。一定の生活資金や自宅を残せる余地があるということです。
②思い切った事業拡大がしにくくなる
個人保証を背負うと、失敗が即「個人の破産」に直結するため、攻めの投資をためらいやすくなります。

前述の中小企業庁も、経営者保証が思い切った事業展開を妨げる要因になり得ると明言しています。これは精神論ではなく、保証という設計が持つ構造的な問題です。
後継者は先代よりも体力も実績も浅いことが多い。そこに保証がのしかかると、設備投資や新規事業の判断が一段慎重になります。会社の成長スピードが落ちる、これが二つ目のリスクです。
③後継者候補から事業承継を拒否されやすくなる
保証があるせいで、有望な後継者が承継そのものを断るケースが現実に起きています。
「会社は継ぎたいが、何億円もの連帯保証は背負いたくない」。私が受けた相談でも、息子さんがこの一点で首を縦に振らない例が複数ありました。
ここは正直、感情も絡む難しいところです。だからこそ、保証を外せる制度があると分かるだけで承継の話が前に進みます。次の章で、承継時に保証がどうなるかを整理します。
事業承継したら個人保証はどうなる?

事業承継時は、ガイドラインを使えば「先代の保証を解除」し「後継者は保証なしで継ぐ」ことが可能になっています。
何もしなければ、先代の保証が残ったまま後継者にも新たな保証を求められる、いわゆる二重徴求になりかねません。これは避けたい事態です。
事業承継に焦点を当てたガイドラインは、平成26年(2014年)から運用が始まっています。東京商工会議所も、これを使えば先代の個人保証を解除し、後継者が保証をせずに承継できる可能性があると案内しています。
つまり「承継=保証もそのまま引き継ぐ」という思い込みは、今は正しくありません。
事業承継のとき、経営者保証を解除するには?
解除のカギは、ガイドラインの3要件を満たし、金融機関に相談し、必要なら事業承継特別保証制度を使うことです。

経営者保証に関するガイドラインでは、保証を外す・見直すための考え方として次の3要件が示されています。これを満たすほど、保証なし融資や既存保証の見直しが現実的になります。
| 要件 | かみ砕いた意味 |
|---|---|
| 法人と経営者の明確な区分・分離 | 会社と社長個人のお金・資産を混ぜない |
| 法人のみの資産や収益力で返済可能 | 会社単独で借金を返せる利益体質である |
| 金融機関への適時適切な財務情報開示 | 決算など財務情報をきちんと開示している |
制度面でも後押しがあります。事業承継特別保証制度は、経営者保証を不要とする信用保証制度として、2020年から経営者保証なしで最大2億8,000万円まで融資が受けられるものとして紹介されています。
さらに2024年3月からは、信用保証協会の保証料率を0.25%または0.45%上乗せすることで、経営者保証を不要にできる制度も新設されたと案内されています。
| 手段 | ポイント | 開始時期 |
|---|---|---|
| 経営者保証ガイドライン | 3要件を満たすと保証解除・見直しの可能性 | 事業承継版は2014年運用 |
| 事業承継特別保証制度 | 保証なしで最大2億8,000万円まで融資 | 2020年 |
| 保証料上乗せ型の制度 | 料率0.25%または0.45%上乗せで保証不要 | 2024年3月 |
まとめ
経営者保証は引き継ぐのが当然ではなく、制度を使えば外せる・背負わずに継げる、これが結論です。
放置すれば、個人財産の喪失・事業拡大の萎縮・後継者の承継拒否という3つのリスクが残ります。逆に、ガイドラインの3要件を意識して財務を整え、事業承継特別保証制度を検討すれば、保証なしの承継は十分狙えます。
私の経験では、決算書を整えるのに数年かかります。承継を考え始めたその日が、保証を外す準備の始まりです。まずは取引金融機関に一度ぶつけてみてください。
賢者の選択 サクセッション編集部

この記事は、事業承継支援歴12年・中小企業診断士として現役で商工会議所の相談に立つ三村哲也が、制度の一次情報を自ら確認して書いています。
数字や制度名は更新されることがあるため、実行前には中小企業庁や信用保証協会の最新情報を必ず確認してください。
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このテーマは「経営者保証」「事業承継」「保証解除」「ガイドライン」「事業承継特別保証制度」といった言葉で深掘りできます。

- 経営者保証ガイドラインの3要件で、保証解除の可否が決まる。
- 事業承継特別保証制度は2020年開始で保証なし融資が可能。
- 2024年3月から保証料上乗せ型の保証不要制度が新設された。
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