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事業承継の基礎知識

事業承継とは?進め方・費用・税金・支援策をわかりやすく解説

三村 哲也 / 更新:2026-06-24
事業承継とは?進め方・費用・税金・支援策をわかりやすく解説
「そろそろ会社をどうするか考えないと」と思いながら、何から手をつければいいか分からない。私が現場で一番よく聞く悩みです。

結論から言うと、事業承継は「誰に・何を・いつ・いくらで渡すか」を順番に決めていく作業です。やることは多いですが、流れさえ掴めば怖くありません。

この記事では、事業承継の意味と3つの方法から、進め方の手順、費用、税金、M&A、失敗回避、使える公的支援までを通しで整理します。私が支援の現場で実際に見てきたつまずきも交えて書きます。

事業承継とは?意味と3つの承継方法をわかりやすく解説

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事業承継とは、会社の経営や資産、人や取引関係を次の世代へ引き継ぐことです。社長の交代だけではありません。株式や事業用資産、技術、従業員、お客様との関係まで含めて「会社まるごと」を渡します。

事業承継の定義と目的(会社の未来をどうつなぐか)

目的はシンプルで、会社が築いてきた価値を途切れさせず、次へつなぐこと。社長が元気なうちに準備するのが理想です。

正直に言うと、相談に来る経営者の多くは「もう少し先でいい」と思っているうちに体調を崩したり、急な事情が起きたりします。準備期間が短いほど選択肢は減ります。

親族内承継・第三者承継・後継者人材バンクの違い

承継先は大きく3つに分かれます。誰に渡すかで、進め方も税金も変わります。

事業承継の3つの方法の違い
方法渡す相手主なメリット主な注意点
親族内承継子どもや親族関係者の理解を得やすい・準備期間を取りやすい後継者の意思・適性の見極め、相続トラブル
第三者承継(社内)役員・従業員事業をよく知る人が継ぐ株式の買取資金をどう用意するか
第三者承継(M&A)社外の企業・個人後継者不在でも会社を残せる相手探しと条件交渉に時間がかかる

親族以外の選択肢として、公的な「後継者人材バンク」もあります。事業を譲りたい人と、創業して会社を引き継ぎたい人をつなぐ仕組みです。

なぜ今ふえている?廃業との比較で考える

後継者が見つからず、廃業を考える経営者は少なくありません。ただ、廃業は設備の処分や従業員の解雇、取引先への影響まで含めて重い決断です。

私は「まだ売れる会社を畳むのはもったいない」とよく伝えます。黒字で技術もあるのに継ぐ人がいない、という会社こそM&Aや人材バンクを検討する価値があります。

事業承継の進め方をステップごとに解説

進め方には型があります。現状把握 → 計画づくり → 後継者の準備 → 関係者への伝達、の順です。ここを飛ばすと後で必ず揉めます。

事業承継の進め方をステップごとに解説

現状把握と事業承継診断・自己チェック

最初にやるのは棚卸しです。株式は誰がどれだけ持っているか、借入や個人保証はどうか、自社株の価値はいくらか。これを把握しないと何も決められません。

私の経験では、株主名簿が古いまま放置されているケースが本当に多い。先代名義や、すでに亡くなった親族名義の株が残っていると、それだけで手続きが止まります。まず名簿を最新にしてください。

事業承継計画書の作り方とテンプレートの考え方

計画書は難しく考えなくて大丈夫です。「いつ・誰に・何を・どうやって渡すか」を年表にするだけ。5〜10年先までの売上目標、株式の移転時期、後継者の役職の上げ方を書き込みます。

後述する事業承継税制を使う場合、都道府県への「特例承継計画」の提出が必要になります。社内用の計画書とは別物なので、混同しないよう分けて作るのがコツです。

後継者の選定・育成と教育の進め方

後継者は決めて終わりではありません。育てる時間が要ります。現場 → 数字(財務)→ 対外関係(金融機関・取引先)の順で任せ、最後に経営判断を渡すのが私のおすすめです。

いきなり社長の椅子だけ渡しても、取引先や銀行は新社長を信用しません。先代が現役のうちに、後継者を一緒に連れて挨拶回りをしておくと、引き継ぎが格段にスムーズになります。

従業員・取引先・金融機関への伝え方

伝える順番とタイミングが大事です。早すぎると不安が広がり、遅すぎると不信を招きます。

私が勧めるのは、幹部社員 → 主要取引先 → 金融機関 → 全社員、の順。特に金融機関は、個人保証の引き継ぎが絡むので早めの相談が欠かせません。

事業承継にかかる費用とお金の準備

費用は承継方法で大きく変わります。親族内なら税金が中心、M&Aなら仲介手数料が大きな割合を占めます。確実に言えるのは「タダでは終わらない」ということです。

事業承継にかかる費用とお金の準備

費用の内訳と相場感の考え方

主な費用は、税金(相続税・贈与税)、専門家への報酬、登記などの実費です。会社規模や自社株の評価額で金額は何倍も変わるため、一律の相場を出すのは正直むずかしい。

だからこそ最初に自社株評価をしてください。ここが分からないと、税金も専門家報酬も見積もれません。

専門家(税理士・弁護士・仲介)への報酬の目安

具体的な金額は専門家や案件で差が大きく、ここで断定はしません。費用感を確かめる現実的な方法は、複数の専門家から見積もりを取って比較すること。これに尽きます。

M&A仲介は成功報酬型が多く、契約前に手数料の計算方法を必ず確認してください。「最低手数料」の有無で、小規模案件は負担が大きく変わります。

融資・資金調達など使える選択肢

後継者が株式を買い取る資金が足りない、というのはよくある壁です。日本政策金融公庫などには事業承継向けの融資があり、自治体の制度融資も使えます。

私の現場感覚では、資金調達は「銀行に行く前に計画書」。返済の根拠が見える計画があるかで、融資の通りやすさが変わります。

事業承継の税金と節税対策の基本

「利益なんか出さなくていい」みんな知らない事業承継の裏情報を教えます
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ここが一番の関門です。自社株は思った以上に高く評価されることがあり、相続税・贈与税が経営を圧迫する原因になります。

相続税・贈与税のしくみと注意点

株を生前に渡せば贈与税、亡くなってから相続すれば相続税がかかります。やっかいなのは、業績が良い会社ほど自社株の評価が上がり、税負担も重くなる点です。

「現金は出ていかないのに、株の価値に税金がかかる」。この感覚のズレで、納税資金が用意できず困る経営者を何人も見てきました。

事業承継税制(納税猶予)の概要

この負担を大きく和らげるのが事業承継税制です。後継者が取得した非上場株式等について、相続税・贈与税の納税が猶予される制度で、会社の株式を対象とする法人版と、個人事業者の事業用資産を対象とする個人版の2種類があります。

法人版の特例措置では、一定の要件を満たすと、後継者が取得した非上場株式にかかる贈与税は100%、相続税は80%または100%が猶予され、要件を満たし続けると免除されます。

この特例措置は平成30年度税制改正で抜本的に拡充されたものです。中小企業庁は、平成30年4月1日から令和9年9月30日までに「特例承継計画」を都道府県へ提出する必要があると案内しています。

さらに、特例承継計画の提出後、令和9年12月31日までに事業承継を行う必要があるとされています。

注意したいのは、提出期限の案内に差がある点です。特例承継計画の提出期限を令和8年3月31日までとして案内するページもあります。掲載時点や制度改正で更新されることがあるため、中小企業庁の最新案内とあわせて必ず確認してください。

私の率直な意見を言うと、この制度は効果が大きい反面、要件を満たし続けないと猶予が取り消されるリスクがあります。使うなら税理士と二人三脚が前提です。

自社株の評価方法と株式移転の実務

自社株評価は税理士の領域ですが、経営者も考え方は知っておくべきです。評価が高い時期に渡せば税負担が増えるため、業績や設備投資のタイミングを見て移転時期を選びます。

株式移転は、生前贈与、相続、売買のいずれかで行います。どれを使うかで税金も手続きも変わるので、ここは早い段階で専門家を入れてください。

M&Aによる第三者承継の流れと価格の決まり方

後継者がいないなら、M&Aで社外に引き継ぐ道があります。「会社を売る」と聞くと身構える方が多いですが、従業員の雇用と取引先を守る現実的な手段です。

M&Aによる第三者承継の流れと価格の決まり方

M&Aの主な手法と売却プロセス

中小企業で多いのは、株式を譲渡する方法と、特定の事業だけを譲渡する方法です。流れは、相手探し → 秘密保持契約 → 条件のすり合わせ → 基本合意 → 調査(デューデリ)→ 最終契約、と進みます。

半年から1年以上かかることも珍しくありません。焦って相手を決めると後悔します。

会社の価値(企業価値)の算定の考え方

価格は「純資産+数年分の利益」をベースに、のれん(ブランドや顧客基盤)を上乗せして交渉で決まるのが中小企業では一般的です。決算書の数字だけでは決まりません。

私が現場で感じるのは、価格は「相手にとっての価値」で動くということ。同じ会社でも、買い手の事業と相性が良ければ評価は上がります。

承継後の経営統合(引き継ぎ)の進め方

契約して終わりではありません。むしろ引き継いだ後が本番です。社風の違いや業務のやり方で、現場が混乱することがあります。

売り手の社長が一定期間残り、引き継ぎに協力する取り決めをしておくと、従業員も取引先も安心します。ここを軽視したM&Aは、後で歯車が狂いやすい。

失敗しないための注意点とリスク管理(独自解説)

ここは競合記事が薄い部分なので、現場の感覚を厚めに書きます。事業承継の失敗は、たいてい「準備不足」と「コミュニケーション不足」の2つに集約されます。

失敗しないための注意点とリスク管理(独自解説)

よくある失敗事例と回避策

私が見てきた典型的なつまずきを挙げます。どれも事前に手を打てば防げたものです。

事業承継のよくある失敗と回避策
失敗例何が起きるか回避策
準備が遅れ社長が急逝株主・後継者が未確定で会社が混乱元気なうちに計画書と遺言を準備
税金の試算をしていない納税資金が足りず株を手放す事態に早期に自社株評価と納税資金の確保
後継者を育てていない取引先・銀行の信用が引き継げない数年かけて現場と対外関係を任せる
親族に説明していない相続でもめ、会社経営に飛び火早めに家族会議で方針を共有

親族間トラブル・遺留分など法務面の備え

後継者に株を集中させると、他の相続人の取り分(遺留分)と衝突しやすくなります。「会社は長男に」という一言が、相続争いの火種になることがあります。

遺言の作成と、生前の家族での話し合いはセットで考えてください。法務面は弁護士、税務面は税理士と、役割分担を意識すると抜け漏れが減ります。

最適な開始時期はいつ?タイミングの判断基準

よく聞かれますが、私の答えは「社長が60歳になったら、遅くともそこから」。後継者の育成に5〜10年見ておくと、無理のないバトンタッチができます。

事業承継税制を使う場合は、計画の提出期限が制度で区切られている点も判断材料になります。期限が近いほど選択肢が狭まるので、早めに動く方が有利です。

事業承継に使える公的な支援策と相談先

経営者必見!失敗しないための相続と事業承継【弁護士解説】
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事業承継は一人で抱えなくていい。国や自治体、商工会議所など、無料で使える窓口がそろっています。私自身、商工会議所の相談員として現役で対応しています。

国・自治体の支援策と補助金の探し方

国は事業承継税制をはじめ、各種の支援策を用意しています。制度の正確な要件と期限は、中小企業庁のページで一次情報を確認するのが確実です。

補助金は公募の時期が決まっています。タイミングを逃すと1年待ちになることもあるので、相談窓口で最新の公募情報を押さえておくと安心です。

都道府県別の相談窓口と支援機関の使い方

各都道府県には事業承継の相談を受ける窓口があり、親族内承継・第三者承継・後継者人材バンクのいずれにも対応しています。まずは地域の窓口に電話一本でかまいません。

中小機構の地域本部や事務所も、ツールやパンフレットの提供、連携支援を行っています。「どこに相談すればいいか分からない」段階でも受け止めてくれます。

専門家の選び方と相談前の準備

税理士・弁護士・M&A仲介を選ぶときは、事業承継の実績があるかを必ず聞いてください。得意分野が違うと、的外れな提案になることがあります。

相談前に、決算書3期分・株主名簿・借入と個人保証の一覧をそろえておくと話が早い。手ぶらで行くより、はるかに具体的なアドバイスがもらえます。

事業承継のよくある質問(FAQ)

相談現場で特によく受ける3つに、私の言葉で答えます。

事業承継のよくある質問(FAQ)

よくある質問

事業承継とは何ですか?
会社の経営・資産・人・取引関係を次の世代へ引き継ぐことです。社長交代だけでなく、株式や事業用資産、技術、従業員、取引先との関係まで含めて引き継ぎます。渡す相手で、親族内承継・第三者承継(社内や社外)・後継者人材バンクの活用に分かれます。
事業承継の費用はどれくらいですか?
会社規模や自社株の評価額、承継方法で大きく変わるため一律の相場は出せません。主な費用は税金(相続税・贈与税)、専門家への報酬、登記などの実費です。まず自社株評価を行い、複数の専門家から見積もりを取って比較するのが確実です。事業承継税制を使えば、要件を満たすことで贈与税・相続税の納税猶予を受けられます。
事業承継は何から始めればよいですか?
現状把握からです。株主名簿の確認、借入と個人保証の整理、自社株評価をして、会社の今を正確に掴みます。そのうえで「いつ・誰に・何を・どう渡すか」を計画書にまとめ、後継者の育成と関係者への説明を進めます。判断に迷ったら、地域の事業承継相談窓口や中小企業診断士・税理士に早めに相談してください。

最後に一言。事業承継は「早く動いた人ほど選べる幅が広い」のが現実です。今日できる第一歩は、株主名簿を開いて自社株の状況を確かめること。そこから始めてみてください。

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三村 哲也

三村 哲也

中小企業診断士(事業承継・M&A支援実績100社以上) ・ 商工会議所の事業承継相談員として現役で相談対応中

中小企業診断士として地方の事業承継支援に10年以上携わり、補助金申請の実務から税制優遇の活用まで、制度の一次情報を自ら確認しながら書いています。難解な制度を経営者目線でわかりやすく整理することを心がけています。

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